みなさんこんにちは。AmedTech代表の天野です。このブログでは少しづつ皆さんのお役に立つ情報を提供していきたいと思います。
AmedTechは体外診断薬や医療機器の開発から患者さんのお手元に届くまでをサポートする会社です。では、体外診断薬とはいったいどういうものでしょうか?
医薬品や医療機器が本当に安全か、ということを確認し、販売してもよいですよ、という許認可を出す組織がPMDA(Pharmaceutical and Medical Devices Agency:独立行政法人医薬品医療機器総合機構)です。PMDAは許認可ばかりではなく、実際に市場に投入された後の安全性の追跡ですとか、万が一患者さんに副作用が出てしまった時の救済措置なども行っています。
さて、このPMDAの審査は、以下の6項目にわたって行われます。
体外診断用医薬品とは、「体外診断用医薬品とは、専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものです。」とPMDAのホームページに記載されています。
要するに、体の外で、体から採取されたサンプルを検査するお薬のことを言います。サンプルには糞尿や汗といった痛みを伴わずに採取できるものや、血液や脳脊髄液などといった、結構取られるのに痛みを伴うものも含まれます。では、「体内診断薬」ってあるのでしょうか?
あります。造影剤なんかがこの分野になりますが、診断薬ではありますが、体の中に入れる薬剤のため審査は厳しくなり、審査対象も体外診断用医薬品ではありません。
ちなみに体外診断薬は英語でin vitro diagunostics (IVD)と呼ばれます。in vitroとは試験管の中で、というラテン語から来ています。一般的にはすべて小文字で、斜体で書かれることが多く、対立概念はin vivo(体内で)です。我々が、文書の中にちょっと英語が入っていると高級感が増すように、英語ではラテン語が入っているとちょっとカッコよいのでしょうかね?研究室では「ビボの実験がさあ~」とか、「やっぱりビトロじゃないとねぇ。」などといった会話が飛び交っていますが、何となくすごい研究をしているような気にさせてくれます。
健康診断の時の尿検査をするにあたって先端に色紙のついたストリップを渡され、尿に浸してください、と言われたことはないでしょうか?あるいは糖尿病の患者さんが指の先を針でつついて、出てきた血液から血中グルコース濃度を測定しているのをご覧になったことはないでしょうか?これらが体外診断薬となります。しかしこのように患者さんが自分で実施する検査は少なく、ほとんどが医師や臨床検査技師、臨床検査会社によって実施されます。
体外診断薬は体内にあるバイオマーカーを測定することを目的としています。バイオマーカーとは患者さんの健康状態や疾患の度合いを表す指標で、直接健康に被害を及ぼすたんぱく質などを測定する場合と、そのものは直接健康被害を及ぼすわけではないが標的の状態を把握するために副産物(サロゲートマーカー)測定する場合があります。ほとんどの場合は目に見えないものを測定するため、何らかの形で目に見える(あるいは測定できる)状態にする必要があります。
バイオマーカーの代表的なものには、たんぱく質、ペプチド、核酸(DNA、RNA)、脂質、ホルモンといったものがあります。このうち核酸は唯一増幅が可能ですが、それ以外の物質は増幅ができないので、濃縮するか、検出シグナルを増幅する必要があります。
検出方法は呈色反応や発光反応を利用したものがほとんどですが、上記の血中グルコース測定は酸化還元反応を利用した電気化学検出法を用いており、このおかげで測定装置もボタン電池で駆動が可能な、手の中に納まるような小さな装置になっています。一般の検査装置は光学検出部を持つものがほとんどです。呈色反応を検査する場合には、ある特定波長の透過率や吸収度を測定することによって定性的な測定が可能になります。発行反応は、優秀なフォトンカウンターを用いれば光子1個からの測定ができますから、最も敏感な測定法といえますが、フォトンカウンターが高価なことと、発光反応系そのものが持つノイズがあるので、ポテンシャルはあるもののあまり一般的ではありません。
たんぱく質の測定ではELISAと呼ばれる酵素反応を利用した測定方法がポピューラーです。結構感度が良いことと読み取り装置が1台あれば、適切な抗体を使うことによって多様な測定が可能になります。最近市民権を得てきた核酸測定装置はPCRと呼ばれる増幅機構を内蔵していることがほとんどであり、検出は蛍光色素を用いた蛍光光学系によるものがほとんどです。こちらも、プライマーやプローブと呼ばれる合成核酸を適切に選択することによって、1つの装置で様々な測定が可能になっています。