昨年末(令和7年12月26日)に標記の通知が厚生労働省医政局総務課長及び厚生労働省医政局地域医療計画課長から都道府県知事、保健所設置市長、特別区長あてに発行されました。今回はこれについて解説をしたいと思います。
検体検査とは臨床検査技師等に関する法律の中で、「人体から排出され、又は採取された検体の検査として厚生労働省令で定めるもの(以下「検体検査」という。)」として定義されています。以前は、この類の検査は患者に直接の影響を及ぼさないため、明確な規制はありませんでした。しかしながら粗悪な検査手法、手技、試薬などにより不正確な結果が得られたり、臨床的に不要な検査が行われたりしたため少しずつ法の整備が行われてきました。大きな転換期は2005年の改正であり、それまで体外診断用医薬品は医薬品の一種とみなされていたのが、「体外診断用医薬品」という新たなカテゴリーが設立され、医薬品とは異なる承認基準が設けられました。最近では平成26年に大きな改正があり法律の名称がそれまでの「薬事法」から「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」へと変更になりました。
このように体外診断薬(in vitro diagnostics: IVD)を製造・販売するには独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ申請をしなくてはなりません。ここでいう製造・販売とは、不特定多数の顧客(だからと言って一般のユーザーすべてが購入できるわけではなく、臨床検査室や臨床検査技師など、訓練を受けた資格のあるものに対してはすべて、の意味です)に対しての販売を指しています。一方で、昔から医師が、あるいは臨床検査室が独自に開発した方法で検査を行う場合がありました。この検査を一般にLDT(Laboratory Developed Test: 検査室開発検査)と呼び、一般に流通しない分PMDAによる厳しい審査を受けずに、患者に対して検査を実施できていました。これらの検査が可能となった法的根拠は臨床検査技師等に関する法律に基づく検体検査の枠組みで、医師の責任下で行われたことによります。実際これらの検査があったからこそ希少疾患の検査や新しい遺伝子検査などが実施でき、患者側にも恩恵がありました。しかしながら、これらの検査にも質の向上が求められ、平成30年の医療法改正により、精度管理の責任者を置くことが義務付けられました。しかしながら外部精度管理については努力義務にとどま第三者認定は推奨とされています。
今回の通知では、改めてLDTに注目し、「LDTsが臨床的仕様を許容される条件」や品質保証について示されています。少し中身を見てみましょう。
要点1: LDTとして何でも認めてよいわけではなく、 ①臨床的な必要性が高く、➁医学的な合理性が高く、➂IVDが存在しない又は入手できなく、④適時にIVDとしての承認が得られない状況にあり、かつ⑤検査の精度が保証されている。これらの条件がすべて満たされた者だけが許容される。
要点2:LDTはIVDにおけるPMDAのような審査機関が存在しないため、独自に①組織としての責任体制と製造・品質管理体制、➁品質・性能等の評価を実施し、➂精度確保を実施するべきである。
かみ砕いていえば、その検査が患者に対して有益であることを検証したうえで、検査工程の内容が常に高い品質を保てるように試薬、工程管理を実施し、これらをモニタリングしかつ精度管理をしながら、きちんと責任者を置きなさい、ということになります。
患者側からすれば当たり前の内容に思われますが、検査する側からするとなかなか大変だな、と思われるのではないでしょうか。特に試薬管理や工程管理は年間数検体しか扱わないような検査では維持することが難しいですし、IVDでは一般に要求される妥当性確認(Validation)もきちんと実施することは大変です。
しかしながら、これをすぐに新たな規制項目と考えるのは早計です。別紙の「本ガイダンスの位置づけについて」では厚労省の補助金による研究で示されたLDTsを使用する場合の管理基準として望ましいもの、としてます。本通知は行政内部での通知であり、一般国民に対して強制力はありません。もちろん罰則も定められておりませんので、この通知の通りに実施しなかったからと言って罰則を科す法的な論拠はありません。しかしながら、厚労省がこのガイダンスに示される方向性で、将来的な法整備を考えている、と解釈しても間違いはないと思います。今から、新たな法規制に向けて準備をしておくことは、十分な準備期間を持つことができ、余裕を持って対応が可能となりますし、何より患者さんへの利益にもなります。
もし、今からLDTsの新たな法規制について準備したい、あるいは具体的に何をすべきか教えてほしい、などのご相談がございましたら、ぜひご連絡ください。お待ち申し上げております。